
新刊「クモのイト」
中田兼介(なかた・けんすけ)
1967年大阪生まれ。京都女子大学教授。専門は動物(主にクモ)の行動学や生態学。なんでも遺伝子を調べる時代に、目に見える現象を扱うことにこだわるローテク研究者。現在、日本動物行動学会発行の国際学術誌『Journal of Ethology』編集長。著書に『まちぶせるクモ』(共立出版)、『びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑』(ミネルヴァ書房)など。監修に『図解 なんかへんな生きもの』(ぬまがさワタリ著、光文社)。こっそりと薪ストーバー。
蜘蛛はその名の通り知的な生物。風を読める。チャンスを待てる。美的センス抜群(網を見よ)。スタイリッシュ(身のこなしと紋様)。巣の中央でじっとしている姿は哲学的でさえある。こんなふうに私もなりたい。――福岡伸一氏(『生物と無生物のあいだ』著者)大推薦。
もしもクモがいなかったら?
蜘蛛の「糸」と「意図」が人間と生物を支配している!?
その驚くべき生態と「クモの知恵」!
「ウェブ」は「クモの巣」の意。人気者・スパイダーマンのキャッチフレーズは「親愛なる隣人」。芥川龍之介の代表作は『蜘蛛の糸』……こんなに身近な存在のクモなのに、知らなかったことばかり!
・網は毎日張り直している
・クモは自分で張った糸を食べてリサイクルする
・メスに食べられないようにプレゼントを渡すオスがいる
・クモはほ乳類を食べることもできる
・クモは日本人よりたくさん宇宙に行っている
・最大7種類の糸を使い分ける
・子グモは糸を使って空を飛ぶ
・オスは脚を使って子作りをする
・年間に世界のクモが食べる量は全人類の体重に匹敵
・クモの糸は細菌の繁殖を抑える
・クモは脳の一部を脚に収納する
・地球に棲むクモの総体重はおよそ2500万トン
・網を張るクモは、眼があまり見えない
・クモの糸は鋼鉄と同じくらいの強さがある
…etc.
本書を読み終わったら、家のクモが違って見える。
そして、人生の視点もちょっと変わる、かもしれない。
【著者より重要なお知らせ(2020年2月4日)】
本書124ページ11行目から15行目にかけての段落には「集団で暮らすクモでは仲間との付き合いが長くなると個性が際立っていく」ことについて書かれています。このことは、Kate L. LaskowskiとJonathan N. Pruittによって書かれ、 2014年に英国王立協会紀要に掲載された“ Evidence of social niche construction: persistent and repeated social interactions generate stronger personalities in a social spider(社会的ニッチ構築の証拠:社会性クモで継続的に繰り返して起こる社会関係がより強い個性を生み出す)“という題の科学論文を典拠としています。
ところが、この論文が2020年1月29日に撤回されました。データの信頼性が失われたことがその理由です。そのため、本書の当該記述も根拠を失いました。読者の皆様にはご迷惑をおかけしますが、ここで書かれていることは事実ではないものとして本書をお読みいただきたくお願いいたします。
(版元公式サイトより)